真珠のこと

 真珠の寿命

光と影・栄枯盛衰... 物事にはいつか終わりが訪れる。 
宝石の中でも構成する物質がすべて有機物(炭酸カルシウム・タンパク質のコンキオリン・微弱な水分)であるため、その輝きには限りがあります。 
有限の時間の中で輝きを放つ「真珠」には日本人の心の根底に受け継がれている諸行無常、「わび・さび」の精神が映し出されている様にも感じます。

 真珠の生産

真珠は紀元前から珍重されてきた貴重な宝石の一つです。 
日本でもあこや貝の中に天然真珠が採取されることが知られており、海外に輸出される品目の中にも含まれていました。 
当時は天然の物であるため不揃いのものがほとんどであり、自然災害の影響を強く受けたためその採取量も極めて不安定でした。 
そのため考案されたのがアコヤ貝(ウグイス目ウグイス科)の内部(当初は貝殻部分と内蔵の間であったが、数年後に手術をして内蔵部分に挿入)に「核」(イシ貝の殻の部分を球体に加工したもの)を挿入し海中で育成させるという養殖方式でした。 1〜2年経過したのち11月から1月の寒さ厳しい季節に浜揚げ(真珠の採取)され選別と加工のち一握りの良質品のみがお客様のもとに「宝石」として届けられます。

 宝石としての真珠

クレオパトラも愛用したと言われる真珠の輝きは控えめな美しさの中にもしっかりとした輝きを放つ魅惑の宝石です。 
ピンク系、ゴールド系、クリーム系、ブルー系、ブラック系、グリーン系など自然が与えてくれた奇跡的な多彩の色調ながらも嫌味なくご使用いただけます。 
近年は「花珠」「オーロラ」「天女」などの恣意的な鑑定方法がある様です。 
確かに美しさを純粋に追求する方法なら良しとすべきでしょうが、販売を目的とする鑑定方法なら疑問符が浮かびます。 
いずれにしても美しい輝きの満足するだけでなく、真珠においては保管方法やメンテナンスも頭に置いて欲しいものです。

 真珠の大敵

真珠の美しさを保つためにはやはり普段のメンテナンスが必要になってきます。 
では真珠の大敵は何なのか? 
それは主に4つ、湿気・乾燥・埃(汗などの汚れを含む)・紫外線です。 
先にも記載した通り、真珠の構成帯は主に炭酸カルシウムと微弱に水分を含んだコンキオリン(タンパク質)です。 
従って湿気と乾燥を繰り返すと水分の出入が真珠にあるためチリや汚れの元になる粒子が真珠表面につきやすくなるし、乾燥しすぎるとカルシウムを繋ぎ止めているコンキオリンが萎縮してしまいます。 
また長時間紫外線が当たり続けているとカルシウムも傷つけますが、コンキオリンを破壊してしまい、最終的には真珠層が崩れて(真珠が剥けてくる)きます。 
そして埃や汚れ、これらに含まれる「酸」性物質が水分を含んでいたりするとカルシウムを直接破棄し始めます。 
主な酸性物質は汗・動物性化粧水・柑橘類・酢などがあります。

 真珠のお手入れ

「汚れたら濡れた布で拭いてください」と売り子さんに教えてもらったとたまに言われるお客さまがおられます。 
決して不正解ではありませんがかなり言葉足らずな説明かなと思います。 
普段のメンテナンスではメガネ拭きの布で、とにかく乾拭きで「拭いていただく」事です。 
真珠の主成分である炭酸カルシウムは酸や油分を含んだ物質に侵食されてしまう性質があるので、それらを拭き取る必要があります。
汗などでひどく汚れてしまったり、酸性物質の液体(柑橘類などの汁)などで汚れた場合は慌てず以下の方法をとってください。

1)鍋で水を沸かし沸騰させる(水に含まれるカルキなどの酸性物質を除去する)

2)綺麗なガーゼを湯の中につける

3)ガーゼを取り出し強く絞り、暖かくやや湿気った状態にする(この時に火傷に注意して下さい。菜箸やトングなどで取り出しある程度冷ましてから水気を絞ってください

4)35度を下回る前に真珠表面を軽く撫でるように拭いてください
※真珠表面に付着したタンパク汚れは34度以上で剥がれ落ちますし、ネックレスなどの場合、水が糸の中に入り込まないようにする為です

5)布の上に製品を置いて、湿気を飛ばし、乾いたら再び乾拭きして保管する

保管場所も湿っぽい・乾燥する・埃っぽい場所は避け、防虫剤や乾燥剤などがある場所などに一緒に保管しない様にしてください。
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 真珠の修理のタイミング

ネックレスの場合は「糸が緩んできた・切れてしまった」「真珠の色が黄ばんできた」など
ブローチやピアス・指輪などの金具に真珠をつけてある場合は「真珠がぐらついている」「接着剤が黄色く変色している」などの見た目の変化が修理のタイミングです

糸で組み上げたネックレスの場合、その寿命は個人差はありますが最大30年と言われています。
当店では10年に一度、糸の交換を推奨しています。
また、黄ばんだ真珠の場合は紫外線によってタンパク質の黄変、いわゆる経年劣化によるものなので修復は不可能です。
ただ、黄ばんでしまったとはいえ布などで強く拭く(ほとんど磨くに近いですが)と輝きが戻る場合が多いので、諦める事はないと思います。

真珠が金具の上でぐらついている場合はすぐにでも接着し直しが必要です。
その場合、穿けてある穴の中に接着剤などのゴミが残っているのでそのゴミを取り出してから接着する必要があります。
接着剤はガラスやセメントなどを接着できる二種混合させるエポキシなどの接着剤がおすすめです。
黄色く変色した接着剤が真珠と金具の周りにある場合、中にある接着剤が無力化しているかどうは不明です。
真珠がぐらつかず、しっかり固定されているなら修理は不要の場合がほとんどです。
黄変した金具周りの接着剤は爪などでこそぎ落とすことができます。
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